Amazing World Album
準備中
AW2×9〜脱出2
 Amazing World ショート・ストーリー
ロックハート城の地下深くに眠る水晶玉には、安置された場所が僅かにずれるだけで世界を変えてしまう不思議な力があった。

最初の転成(イベント)はお城の地下に迷い込んだMiuが氷の中でキラキラ輝く水晶玉を見つけ、好奇心から拾い上げてしまったことがきっかけで起こった。
その瞬間から世界は一変…
愛は憎しみに、美しいものは醜いものに、華やかなロックハート城は油まみれの鉄骨の廃墟に、仲良し姉妹は宿敵同士へと変わり果ててしまう。

イベントの後、 Miuが目覚めた時、彼女の記憶には自分の名前以外何もかもが消えていて、唯一の手がかりはこぶしの中に握り締めていた水晶玉だけだった。
自分の素性、性格、生きる意義すらも解らずにさまようMiu…。
Miuの体力が回復すると、水晶玉は彼女に様々な形でシグナルを送り始める…テレバシー、刻印(Tatoo)。
水晶玉に導かれ始まったMiuの旅…旅先で遭遇する様々な出来事によっていつしか、Miuの意識下にある使命が植えつけられていった。
「Keep being your self.」
それは「果さなければ終わらない」という、水晶玉から発信されている強い意志だった。
ある日、水晶玉はMiuの右腕にある重要なメッセージを刻印した。
「36.631819,138.988895」
それは、水晶玉の正位置を示す数値だった。

Miuの旅の果て、水晶玉が元の世界軸にリセットされ、再転成が始まる。
…こうして、世界は愛と平和を取り戻すのであった。

 AW2×1&2〜脱出
→アルバムはこちらから 前編後編  
この日、ロックハート城の南西の海域で発生した大規模地震は山間に建つ堅牢なお城の根幹をも揺れ動かした。
その影響で地下深く眠っていた水晶玉の世界軸がずれ、再び転成が起きてしまう。
これは運命なのか、水晶玉の真上の階に居合わせたmiuと水晶玉の地軸がシンクロし、彼女はこの転成の巻き添えを食らってしまう。

…目覚めたら、そこには闇が広がっていた。
頭の中に残っていたのは自分の名前だけ。
そして、手の中には小さな水晶玉が入っていた。
???…パニック…そして、絶叫。
しかし、彼女の叫び声は闇の中を空しくこだまするだけ。
目が馴れてくると、自分の周囲の空間がおぼろげに浮かび上がってきた。
人気はなく、無機質な石柱が延々と連なるだけの広大な空間。  
静寂と憂鬱が支配し、不気味な威圧感さえ感じる。
体の向きを変えると、微かに金属の構造物が見えた。
あれは階段!?
目に写る、新しい情報にしがみつくしかなかったMiuは一目散に駆け寄り、物怖じもせず、階段を登り始めた。
上へ上へと。
しばらくすると、遥か上方にどこからか洩れた光がうっすらと見えた。
その光源を求めて、Miuは一気に駆け上がった。
扉だ!
Miuは勢いよく扉を押し開けた。

目の前に大きな河が飛び込んできた。
振り返れば暗闇の世界、正面には河…。
後退りすることもできず、Miuはくフラフラと川沿いを歩き出した。
絡み付くブッシュが足取りを鈍くする。
辛い…。
どれくらい歩いたのだろうか?
Miuの足取りが一段と重くなり、疲労がピークに達しかけた時だった。
後ろの方から軽快なエンジン音を響かせて、一隻の船がMiuの脇を横切ろうとしていた。
「おーい、姉さん、乗っていくかい?」
振り返ると、優しそうな船長が笑顔でMiuに手を振っていた。

あのおどろおどろしい巨大な鉄の建物・エリアKがゆっくりとMiuの視界から消えて行く。
クルーザーのデッキの上でその光景を見つめているうちに、Miuの心の中に安堵が広がっていった。
ついさっきまでMiuはあの建物の地下空間の闇に怯え震えていたのだ。
Miuが先のことを考え途方にくれていると、どこからか、グラスを弾いたようなすずの音色が聞こえてきた。
…チリン。
人の気配を感じ、後ろを振り返ると、一人の女がワイングラスを片手にデッキチェアーに腰かけて微笑んでいた。
…きれいな人。
夜のとばりもおりて、風が肌寒くなってきた。
miuはキャビンに降りて一休みすることにした。
扉に手をかけた瞬間、意識を失い、miuはその場に崩れ落ちた。
薄れてゆく意識の中で、鋭い眼光で睨みつけるあの女の邪悪な表情が脳裏に焼き付いた

 AW2×3〜迷妄
…目が覚めた場所は、無数のヘッドライトが交錯するスクランブル交差点に架かった歩道橋の上だった。
見覚えのない街、見知らぬ人々…雑踏に囲まれていながらも、地下神殿で感じたものと変わらぬ孤独感、不安をMiuは覚えた。
闇に包まれた街。
もうろうとしていた意識の回復を待ちながら、意識を失う前の出来事を思い出してみた。
記憶の最後に残ったイメージは…扉、そしてあの女の邪悪な笑み。
ふいに、背筋に悪寒が走り、急き立てられたかのようにMiuはその場を離れた。
人通りの多い方角へと足を向けていたつもりが、いつの間にか薄暗い路地へと迷い込んでしまう、なぜだろう?
目の前の道を真っ直ぐ突き進もうという意思に反して、足が勝手に角を曲がり、そして立ち止まった。
「こ、これは…!」
見るからに堅牢な第三の扉がMiuの前に現れた。
体はその先に進むことにしか反応しない。
Miuは恐る恐る扉の取手に手をかけ、重い扉を押し開けた。

そこには、新たな闇の世界がMiuを待ち構えていた。
暴走する体に任せて、暗く狭い路地がいりくんだ一画をヘトヘトになるまで歩かされたMiu。
見晴らしのいい場所にたどり着いて、ようやく空を見上げ大きく息を吸った。
「間もなく夜が明ける…。」
闇の世界を放浪し
続けたmiuには夜が明けるのが嬉しかった。
いつの間にか、Miuの背中には謎のメッセージが浮き出していた。
「Completed 30%」
???
一息ついたのもつかの間、Miuの目の前には新たに、第四の扉が待ち構えていた。

 AW2×4〜迷妄2(バトル・イン・アストロホール)
 目覚めたのは、赤い格子扉のエレベーターの中だった。
真っ白いエレベーターに乗っていたはずだった。
しかし、ここは鮮血、もしくは真紅のバラのように真っ赤な箱の中。

…奥の方から女の歌が聞こえてくる。
その優しい音色は、どこかで聞き覚えがある。
歌声につられて、Miuはふらふらと歩き出した。
「あっ!」
ステージの先端でスポットを浴びている女は、船の上で意識を失いかける直前に邪悪な笑みを浮かべていた、
あの女にちがいない。
Miuはとっさに人影に身を隠した。
ファンらしき男たちが彼女のステージに興奮し叫んでいる。
「Reila、Reila!」
一人の少女がMiuの目の前を通り過ぎて行った。
「あれは…ひょっとして私?!」
ステージの上で、Reilaが少女を誘う。
赤いバラを握りしめ、刺にかきむしられて鮮血がしたたる長い腕が妖しく宙を舞う。
Reilaの誘いに吸い込まれようとしている自分の幻視像を追いかけながらMiuは叫んだ。
「行かないで!」
Reilaはニヤリとほくそ笑みを浮かべた。
幻視のMiuは消え、それに代わりオリジナルのMiuがステージにあぶり出されようとしていた。
MiuはReilaの取り巻きに囚われ、着ていた服を剥ぎ取られ、ステージ上に押し上げられた。
Reilaの羽交い絞めに苦しみもがくMiuの口の中にReilaの鮮血が流し込まれる。
足元では仮面をつけた男たちが気勢を上げて絶叫している。
「Reila、Reila!」
まるで、呪文を唱えているかのよう。
Reilaが身につけていた布にくるまれて、Miuは椅子に座らされた。
背後から鈴の音が遠ざかってゆく。
チリン…。
ふと、Miuの脳裏にクルーザーのデッキの上で同じ音色を聞いた記憶が蘇る。
そして、あの時から自分がReilaのイリュージョン(迷妄)の世界に落ちてしまっていたことを確信した。

ステージ上ではReilaが飽きることともなく、好きなようにMiuをいたぶっていた。
喉は枯れ、気が遠くなるほど疲れきっていても、けたたましく鳴り続ける音楽に体は躍動的に反応する。
このまま、Reilaの思いのままに操られ、息が途切れるまで踊り続けるのだろうか…。
絶望感がMiuを襲った。
その最中で、Miuは曲と曲のわずかな消音の時間の一瞬だけ体が自由を取り戻すことに気がついた。
そして、千歳一遇のチャンスが…。
音響ブースでエラーが起き、数秒間消音状態が続くアクシデントが発生したのだ。
Reilaの妖力は失われ、Miuの体は意思を取り戻す。
この好機に、MiuはRailaを振り切って近くの扉に駆け寄った。
指先が扉に触れた瞬間、意識を失い、Miuはその場に崩れ落ちた。

 AW2×5〜レイラのキャットキャッスル(猫城)
  痛いっ…誰?
腕を後ろできつく縛られ、その痛みに耐えかねて目覚めた。
ここは暗闇?
一瞬、闇の地下空間に舞い戻ったかと思ったが、顔に触れる布の感触で、目隠しをされていることに気づく。
Miuは何者かに拘束されていた。 両腕をつかまれ、体を強引に引き起こされる。 ここにいるのは少なくとも二人…。
手荒く引っ張られ、どこかに連れて行かられようとしていた。
立ち止まると、膝の裏をゴツリと蹴飛ばされ、用意されていた椅子に腰が落ちる。
がさつに目隠しを外されたMiuの目の前に、擬人化した猫を両脇に仕わせて、優雅にソファーに腰かけたReilaが現れた。
 中央の通路に敷かれた深紅色の絨毯、一段高い台座の上に置かれた豪華なカウチソファー、上品なドレスに身をまとい、頭上にはこの館の主君である事を象徴したティアラが輝いていた。
レイラは威厳に満ち溢れた眼差しでMiuを見据えると、身を起こし、脇の二人に目配せをして何かを指示した。
この二人は見るからにレイラより年が若く、レイラの尊大な態度からして身分が低いのが分かる。
レイラの命令を受けた二人はMiuの手錠を外し、乱暴に彼女を床に叩きつけた。
…それにしても、何故レイラは私に絡んでくるんだろう?
そう言えば、レイラに得体の知れない媚薬を無理やり飲まされ自我を失いながらも、ほうほうの体で逃げおうせたあの時…
レイラは従順な時の私には手を取ってダンスを踊り、抵抗するとムチを振り回してサディスティックに変貌した。
…?
肩を押さえられて絨毯の上に平伏すMiuの脳裏には、彼女に関わろうとするレイラの一連の奇妙な行動がよぎり、そして、頭上で自分を見下しているレイラの顔が浮かんだ。
レイラは自分を洗脳、もしくは何か違う者に変貌させようとしているのではないか、Miuは直感的に思った。
研ぎ澄まされた鋭いレイラの爪先がMiuの喉元を這い、下顎を持ち上げた。
Miuの目と鼻の先には不敵な笑みを浮かべたレイラの顔があった。 レイラは囁きかけるように言葉を滑らせた。
「そろそろ終りにしようね、」
そして、自分の首の後ろに手を回して鈴のついたネックレスを外した。
鈴を持った手がゆっくりとMiuの首に巻き付き、レイラの手がMiuの首から離れると、ネックレスがMiuの首から垂れ落ちて鈴の音を鳴らした。
チリン…
突然、血が沸き、体験したこともない高揚感がMiuを襲う。
確かな体の異変を感じ差し出された鏡を見上げる。
そこに映っているのは獣人化が始まった自分ではないか!
Miuは手で顔を覆い、叫んだ。
「やめてー!」
自分の声に驚き、Miuは目を覚ました。
夢とは思えない、五感に残る鮮やかな記憶がMiuを身震いさせた。
朝の眩しい日差しが心地いい。 外の空気を吸おうと思い、扉のノブに手をかけた瞬間、
Miuの意識は途切れるのだった。

 AW2×6〜墓所
 季節はずれの冷たい風が吹き抜ける、肌寒い袋路地でMiuは目覚めた。
木の葉から漏れた強い日差しに目がくらみ、立ち上がろうとした脚が絡まる。
壁に体を預けながら、かろうじて身を起こす。
壁の表面の不思議な感触が気になって、顔を近づけてみた。
これは…!
昔見た、分厚い図鑑に描かれていた化石?
見渡すと、路地の突き当りの先は洞窟になっていて、そこに向かって両脇の壁のあちこちに見覚えのある化石らしきものが埋もれていた。
洞窟は、外部からの侵入を拒むように、あるいは、内部からの脱出を禁じるかのように、厳重な鉄格子で閉ざされてはいたが、暗闇から押し寄せる冷気の風圧で片側の扉が開き、カタカタと音を立てて揺れている。
どことなく、待ち人を誘っているかのようにも見える。
Miuの頭に不吉な予感が横切ってゆく。
もし、目覚めた場所をリセットすることができるなら、迷わずそうしたであろう。
…引き返すことができないという使命感が、扉の前で萎縮していたMiuを突き動かした。

 入口から漏れた光が届かなくなると、その先は一寸先も進めなくなる、漆黒の闇だけが広がった。
どうしよう…。
背後で扉が閉まる、けたたましい音がし、闇の中を走っていった。
Miuの全身が恐怖でこわばってゆく。
予期せず、胸元の水晶玉が輝きだし、Miuの足元を照らした。
Miuが立っていた所は、丁度水極の崖の縁だった。
一歩でも踏み込んでいたなら、黒ずんだ水溜まりに転落していたに違いない。
水晶玉の明かりがゆっくりと移動し、闇の先を照らした。
他になす術もなく、Miuは水晶玉が照らす道筋をたどって恐る恐る前へと進みだした。
突然、大きな岩が目の前に現れた。
その岩を避けて通ると、その先の岩の裂け目のような空間からうっすらと外の光が漏れてくる。
何かが立ちふさがり、射し込む光を遮っていた。
その恐ろしいシルエットは一目で解った。
恐竜…!?
後ずさりながら、よろめくMiuの胸元で大きく水晶玉が揺れる。
その弾みで、目の前の大岩の側面が映し出された。
恐竜!
大きな頭を地面にこすりつけるように、太く長い首を曲げて、敵を威嚇している。
そして、血走った目はMIUを睨み付けているかのようにさえ見える。
しかし、今にも襲いかかってきそうな気迫をたぎらせている恐竜たちだったが、瞬時にして命を奪われるという悲運さえ知ることもなく、動きを止められ、長い歳月をかけて化石化してしまったのだろう。
Miuが入り込んだ、この場所は恐竜たちの墓場だったのだ。

 そうとなると、出口を見つけ出して、一刻も早くこの場所から逃げ出したくなる。
何が起きても不思議ではないこの世界、魂を取り戻した恐竜たちが、いつ鋭い鍵爪を降り下ろしてくるかわからない。
一歩でも踏み外せば、水溜まりに落ちてしまう危険な道ではあったが、Miuは水晶玉が照らす道を一目散に進んだ。
途中、何体もの恐竜の化石と遭遇し、その影にさえ怯えさせられたが、いつ終わるとも分からない闇の空間をMiuは延々と歩いた。

 いつから聞こえだしたか分からないが、気づいた時にははっきりとその音色が水晶玉が示す道筋の先から聞こえてくるのが分かった。
聞き覚えのある、懐かしいオルゴールの演奏。
先に進むにつれてその音色は大きくなり、やがて目の前にうっすらと外からの光が入り込んできた。
その光が強くなるにつれて、オルゴールの音は更に大きくなり、逆に胸元の光は弱くなってゆく。
そして、水晶の明かりが完全に消えた時、Miuの目の前に大きな鉄格子の扉が現れた。

 扉にそっと手をかけると、意識が途絶え、Miuはその場に崩れ落ちた。


 AW2×7〜望人
 暖かい音色がMiuの意識を揺さぶり、目覚めを促した。
記憶に残るこの音色は、意識を失う直前に聞こえていたオルゴールの演奏だ。
投げ出された下半身のドレスの裾から、両足にあしらわれた美しい靴が目に写った。
その上を目まぐるしく駈けていく光…
ここはどこ?
振り返ったMiuの瞳に光の束が襲いかかる。
光に馴れだすと、今度は白い馬が、黒い馬が、ダチョウが次から次へと向かってくるのが見えた。
いやーっ!
とっさに目を伏せるMiu。
…何も起きない。
動物たちは規則的な動きで、Miuの目の前を通過して行くだけだった。
立ち上がり、周囲を見渡すMiu。
その瞳に写ったのは、きらびやかな光と極彩色に塗り飾られたメリーゴーランドだった。

 
流れる景色、オルゴールの音楽に合わせて縦、横に踊る動物達、キラキラと輝く光…楽しい 。
旅が始まる以前の記憶を失ってるのだから当然の事だが、Miuにはこんな風にリラックスした一時を過ごした覚えは一度もなかった。
休むことも忘れ、Miuはひたすら回転し続けるメリーゴーランドに興じた。

 どれほど時が経っただろうか、あんなに心を踊らせたメリーゴーランドも、やがては飽きがくる。
冷静さを取り戻してゆくに内に、Miuは自分に課された使命を思いだす。
終わりの分からい旅ではあったが、とにかく前に進むしかないのだ。
先ずは、この世界から抜け出す出口を見つけなければならない。
ふと、ある事に気がつく。
そう言えば、さっきまで一緒に乗っていた人がいなくなっている。
「誰か!誰かいないのー!?」
Miuが渾身の力を込めて呼びかけるが、その声に応じてくれる者はなく、メリーゴーランドを天幕のように覆う森の葉っぱに跳ね返されて戻ってくるだけだった。
Miuの心に乾いた風が吹き抜けて行く。
無性に誰かの声が聞きたい、人の存在が恋しい。
Miuの手が無意識に胸元をまさぐる。
ない…!!
常に、Miuの胸元で彼女を陰ながら支えてくれていた水晶玉がない。
どうしよう…

突然、メリーゴーランドが唸りを上げて加速しだした。
その衝撃で振り落とされそうになるが、辛うじて近くのポールにしがみつき難を逃れたMiu。
回り続けるメリーゴーランドは、もはや飛び降りることもできないほど高速に回転している。
その遠心力が必死でポールにしがみつくMiuの指先を痺れさせ、ジリジリとポールから引き剥がそうとしていた。
突然、金属がきしむ甲高い音を立ててメリーゴーランドが急停車した。
Miuはその衝撃で体を前後に大きく振られて、外に放り出されてしまう。
痛…。
フラフラと立ち上がると、メリーゴーランドの周辺の景色は一変していた。
メリーゴーランドに乗っていた子供に手を振っていた人も行き交う人で賑わう広場も消え、深い森へと続く一本の道がMiuの目の前に延びていた。
Miuの手がモジモジと消えた水晶玉を探す。
すると、森の奥の方でMiuに合図を送るように、チカチカと何かが光った。
あれは水晶玉?
Miuは確証も得ないまま、一目散に暗闇の森の中へと飛び込んで行った。

 AW2×8&9〜水晶・前後編
 木の葉の隙間からのぞく空が淡く色付き始め、静かに闇夜が明けようとしていた。
道案内役として、夜通し付き合ってくれた水晶玉の光も、朝が来れば消えてしまうだろう。
途方もなく長い道のりを歩き続けては来たが、未だ確たる進展の道筋はは見えてこない。
その上、頼みの綱の水晶玉のナビを失ってしまっては、道を閉ざされたに等しい。
焦りと失望の影がMiuに忍び寄ってきた。
 不意に、一筋の朝の光が森の隙間を拭って、Miuの前を行く水晶玉の上に落ちた。
陽だまりの中央で朝陽の直射を受けた水晶玉が発光し始めた。
それは、一瞬にして稲妻のような強い光に変わり、そして、ゆっくりと薄らんでいった。
光が消えると、一緒に水晶玉は消えて失くなり、代わりに、身の丈以上の大きなフレームが現れた。
唐突に現れたフレームは、森の中では似つかわしく、あまりにも異様ではあったが、Miuの中では懐かしさに似た不思議な感覚が湧いてきていた。
あたかも自分の部屋の仕切りでもくぐるかのように、Miuは無造作にフレームの中に入った。
これは!?
フレームをくぐると、目の前の景色は変わり、身につけている物全てが一変してしまった。
(後篇につづく)

 AW×10〜行程
 その町の人たちは鍵をかける習慣のない人たちだった。
そして、どの建物にも開けっぱなしの扉、閉め切った扉があることに、誰一人気に止める者はなかった。
言い伝えによると、扉の鍵の施錠、解放には規律があり、その法則が狂った時、同時に世界軸が狂ってしまうという。
また、何らかのアクシデントで転成が起ってしまい、世界軸の変化によって生じた災いが町に及んだ時、町を救うため、光る球を胸に宿した一人の少女が訪れるという。
扉の施錠、解錠の規律を正すために使うマスターキーをこの少女に託すため、創造主は町の長にそれを作らせ持たせたという。

「Miu、君がこの部屋を出て行った後に目覚めるのは、時間が止まってしまった町だ。
君はそこで歌姫を探し出し、彼女の首にかかった鍵を手に入れなければならない。
そして、いくつかの建物を回り、解放されている扉には施錠を、施錠されている扉は解錠し、扉の規律を正さなければならない。
このプロセスなくしては、君が元の世界軸に戻ることはできない。
もちろん、道案内は私が引き受けよう。
さあ、早く、鈴をつけた魔女に邪魔だてされる前に行くんだ!」

押し出されるようにして部屋を出た後、気を失ってしまっていたMiuは冷たいベッドの上で目を覚ました。
(つづく)